第9回分
Ioの変化がわずかである場合の等価回路であるが、VGSやVDSの変化も微小であるのか?
VGSやVDSの変化も微小である、という仮定があるから、
gmやrdなどに比例する、という線形化ができるわけです。
VGS -VDS< VTのときVDSが大きくなってもIDがほぼ一定なことがよく分かりませんでした
チャネル自体に加わる電圧が一定でもドレインとピンチオフ点との距離が長くなると電流IDは減るんじゃないでしょうか?
ピンチオフ点でチャネルが消えてしまうのにIDが流れるのは知らなかった。
そしてその一定のIDは、ドレイン-ソース間の電圧(VDS)で決まりますから、
ピンチオフが起こるまでは、VDSが増えるとIDも増えます。
しかしピンチオフが起こってしまうと、
ピンチオフ点とドレインの間は、チャネルではありませんから、
キャリアが存在せず、結果として等価的に抵抗が大きい領域とみなせます。
つまりピンチオフが起こった以降は、VDSを増やしても、
増えた分が、ピンチオフ点-ドレイン間に加わっていき、
IDを決めている、チャネル部分にかかっている電圧はほぼ一定となりますから、
IDはほぼ一定となります。
(ピンチオフ点-ドレイン間にかかっている電界は非常に大きくなり、
この部分に来たキャリア(電子)は、無条件でドレインに吸い込まれますから、
ピンチオフ-ドレイン間の距離は、IDにはほとんど影響しません)
VGS>VTとVGS -VDS> VTのVTは同じなのかどうか疑問だった。
同じもの(しきい値電圧)で、チャネルの形成に必要な、チャネルにかかる
電圧、です。
最後の回路図になる理由がよく分かりませんでした。電圧制御電流源とはどのように働くものですか?
制御側(左側)に加える電圧のgm倍の電流が流れる電流源、
ということです。
電流源のツマミを、制御側に加える電圧でまわせるもの、のような感じです。
id = gm vgs + vds/rdのgm vgsにどうしてなるのかが分からない。
上記の電圧制御電流源の分ですね。
VDSをどんどん大きくしていくと、ピンチオフ点が右に移動していくと思うのですが、右端まで行ってしまうのですか?
理屈の上ではそうなります。
ただし一般には、ピンチオフ点がソース端に届く前に、
ブレイクダウンという現象がおこり、IDが急激に増える、という
現象がおこりますから、そのような現象はみられないでしょうね。
MOS回路ではIDとVDSの関係は動作点付近が最も重要なのだろうか。
増幅器を考える上では、そういうことです。
MOSトランジスタの小信号等価回路があまり分からない。
VGSなどの変化が小さければ、IDはVGSなどの変化に比例する
(いくら非線形なものでも、変化が微小であれば線形に近似できる)
と近似できるわけで、その近似を行った回路、です。
MOSトランジスタで増幅回路を作る際、動作点を設定すると情報回路第一でやったような負荷線は引かなくて良いのか?
もちろんひきます。
何故∂f/∂VGS = gm 、∂f/∂VDS = 1/rdとなるのですか?
IDの全微分をとったとき、出てきたこれらの係数をgm、1/rdと
おいた、んですね。
チャネルというものがどういう働きをするかよく分かりません。
部分的にn型になってソース-ドレイン間をONにする、という領域で、
ゲートに加える電圧によって形成されるものです。
rd とgmの値はどのように決定されるのかが疑問だった。gmがどういうものなのかよくわかりませんでした。
gmは、定義から動作点のまわりでVGSを微小に変化したときの
IDの変化分、の比例係数、ということですが、
gmやrdは、実際には動作点のまわりでVGSなどを変化させて
IDの変化を観測して求めます。
閾値電圧VTはMOSトランジスタによって異なるのですか?異なるのは使用する物質のためなのですか?
スレッシュホールド電圧VTは常に一定なのか?どこから決めたのか?
このあたりはなかなか奥くが深い話で、「半導体工学」で習うかもしれませんが、
主に決まる要因は、チャネルに打ち込むp型不純物の濃度です。
入力のVGSをどのようなものにしてもいいと言っていたが、VGSの最小値がVTよりも小さくてもいいのですか?
もちろんかまいませんが、それではチャネルが形成されませんから、
トランジスタとして働かない(IDが流れない)ので、あまり意味はなさそうですね。
トランジスタにはMOS以外にどのようなものがあってどうやって実現されているのですか?
情報回路第1で習ったバイポーラトランジスタ、あたりが有名どころでしょうか。
チャネルが出来たり消えたりするのはどうしてですか?
ゲートに加わる電圧によって、p型領域中の電子が集まってきて、
部分的にn型になるから、です。
チャネルに加わる電圧はVDSのことですか?
ピンチオフが起こる前であれば、VDSはすべてチャネルにかかっていますね。
ピンチオフが起こったあとは、VDSの一部がチャネルにかかることになります。
MOSトランジスタの小信号等価回路で、VGSを増やすとIDが増えるわけですが、VGSの上限はあるのでしょうか?
理論上は存在しません。
ただし実際には、あまりVGSを大きくするとゲートの下の絶縁膜(酸化膜)が
壊れてしまうので、物理的な上限は存在します。
MOSトランジスタで、ゲートには本当にまったく電流は流れないものなのでしょうか?
直流としては、理論上は流れません。
ただしゲートの下の絶縁膜(酸化膜)が、完全な絶縁体ではないので、
ほんの少しは流れます。
またVGSはコンデンサのようにみなせますから、VGSに交流を加えると
その充放電の電流が流れてい(るように見え)ます。
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