前回は、交流から直流を作り出すための回路として、整流回路、平滑回路、電圧安定化回路についてみてきました。
もちろん実際の電源回路でもこれらの回路要素が使われているわけですが、特に電圧安定化回路は、複雑であるのに非常に利用頻度が高いので、
俗に「3端子レギュレータ」と呼ばれる専用のICが多数製品化されています。
みなさんもおそらくこの「3端子レギュレータ」を使って電源回路を作ることがあるかと思いますので、
実際の製品のデータシート (p.1, p.2のみ) をみながら、使い方を知っておくことにしましょう。
このように3端子レギュレータを使うと、非常に簡単に安定した直流電圧をつくることができます。
このように3端子レギュレータは非常に便利なものなのですが、1つ注意しなければならないことがあります。
たとえば10V程度の脈流から安定な直流5Vを、3端子レギュレータを使って作り出す場合、その電圧差の約5Vが、
3端子レギュレータ自体によって発生している、ということです。
もちろん電源回路ですから電流が流れているわけで、たとえばつながっている負荷に1Aの電流が流れているとすると、
この3端子レギュレータは、1Aの電流で5Vの電圧が発生する抵抗(R = V / I から R = 5Ω)のように働いているわけです。
抵抗ですから、当然電流が流れると熱が発生し、P = VI = 5W もの電力を、3端子レギュレータが消費しているわけです。
5Wといってもピンとこないかもしれませんが、1cal = 4.2Jですから、5Wといえば1.2[cal/s]程度、つまり1gの水が毎秒1.2℃温度が上がる計算になります。
というとたいしたことがないようにみえますが、1gの水が1分弱で沸騰してしまうわけで、これほどの熱が小さなICから発生するわけですから、実際かなり熱くなります。
そこで熱を逃がすための放熱板をつけることが一般的です。
このように3端子レギュレータは便利ですが、発熱のことを注意する必要があることを頭にとめておいてください。
3端子レギュレータは、安定した直流をつくりだすために抵抗に電流を流したときの電圧降下を利用しているわけですが、
この電圧降下は、そのまま熱になってしまい、ある意味無駄になっているわけです。
そこでもっとエネルギーの利用効率を高めようという発想の電源回路もあって、それはいったん交流を使うというものです。
その方式はいろいろありますが、基本的には、2つのコイルを磁気的に結合させたトランス(変圧器)という部品を使うものです。
トランスは、交流の電圧を自由に変えることができるものですが、直流に対してはどうしようもありません。
そこで、いったん得られている直流(脈流)から、発振回路を使って交流を作り出し、それをトランスで電圧を変え、希望の電圧に近いところでふたたぶ直流に戻す、ということをします。
この方法によれば、3端子レギュレータのような両端の電圧差を小さくすることができて電圧降下に伴う損失を減らすことができ、
かつトランスの使い方によっては、元の電圧よりも高い直流電圧を得ることもできます。
このような、直流から交流をつくりだす、エネルギー効率のよい発振回路は、昔はなかなか作ることができなかったのですが、
集積回路技術の進歩によって、かなり手軽に使えるものになり、それにともなってスイッチング電源も一般的になってきました。