第9回
VTの意味がよく分かりませんでした。
ある程度の電圧をGに加えないと、チャネルがN型に反転しないので、
そのために必要な電圧、ということです。
MOSトランジスタの絶縁体の部分はどういう役割があるのですか?
Gとチャネルが電気的に接続されないようにしています。
これによって、Gには電流が流れず、そこに加わる電圧による
電界だけで、チャネルの様子を制御できます。
飽和領域と非飽和領域の違いがよく分からなかった。
非飽和領域では、VDSを増やすほどN型になっているチャネルが
大きく(深く)なるので、IDが増えていきますが、
飽和領域に入ると、VDSを増やしても、ピンチオフ点が
移動するだけでチャネルの大きさ(深さ)は変わらず、
したがってIDもほぼ一定となります。
ホールが逃げるとかがわからない。ホールは動けるものなのか?
詳しくは触れませんでしたが、ホールとは、自由に動ける電子が
抜けた穴、で、「正の電荷を持っているように見える」ものですので、
実体は、電子が逆向きに動いているだけですから、
ホールは「移動」できます。
相互コンダクタンスとはどのような働きがあるのですか?
Gに加える信号が、IDにどれぐらいの比例係数で効くか、という
係数ですね。
どのようなものにMOSトランジスタは使うのですか?
ほぼすべての半導体、といっても過言ではありません。
つまり、ほぼすべての情報機器(の中の集積回路の中)、ということです。
MOSトランジスタの小信号等価回路の使用用途がよくわからない
次回、いろいろと具体例をみましょう。
チャネルの右端がnに反転しても何も変化はないのか?
ピンチオフ点の、p型、のことですかね。
講義では時間の関係で詳しく触れませんでしたが、
IDとして、チャネルの中をピンチオフ点までやってきた電子は、
ピンチオフ点から先は、チャネルがありません。
しかしピンチオフ点とD領域の間はN型になっているチャネルよりも
抵抗が大きく、したがってS-D間のVDSのほぼすべては、
このピンチオフ点とD領域の間に加わります。
そのため、ピンチオフ点から出た電子は、この電圧による
電界で加速され、一気にD領域に入ります。
ID>0 のときのVDSの変化で、VDS > VGS − VT のときにID = 0 とならずにIDがほぼ一定になるというところがよく分からなかった。
VDSを増やすとピンチオフ点が左にズレると言っていた所がよくわからなかった。
ピンチオフ点のズレについて端折った部分を詳しく。
上記のとおりです。
ピンチオフ点が現れたあとに、VDSを増やしていくと、
チャネルの、さらに左側のところでも、
実効的なG電圧であるVGS-VDSがVTより小さくなるところが
出てきますから、結果として、そのようなところでも
チャネルがN型にならなくなり、ピンチオフ点が左に移動します。
ピンチオフ点がどこか分かりませんでした。
N型のチャネルが、右に行くにしたがってだんだん細くなっていき
(等価的にチャネルに加わっている電圧が、右に行くほどVDSの影響が
効いてきて小さくなるため)、それがなくなるところ、が
ピンチオフ点です。
ピンチオフ点がS側のnまでズレたときはIDはどうなるのですか?
通常はそこまで行く前に、別の要因で、IDが急激に増えます。
(ブレークダウンと言います)
SやDは電子の流れということでしょうか?電流だと逆と思うのですが。
なかなか鋭いです。
IDは、Dに流れ込んでいますから、DからSに流れるわけですから、
電子の流れは、その逆で、SからDに向かいます。
そのため、Sを「電子の供給源」(source)と呼ぶわけですね。
ID − VDS のグラフの意味がよく分かりませんでした。
VGS>VTの場合に、非飽和領域と飽和領域で、分けて考えてみてください。
その後、VGSを増やすほど、チャネルが大きく(深く)なるので、
IDが増える、という理解をしてもらえればよいかと思います。
id = gmvgs + vds/rd でidが表されるというのがよく分かりませんでした。
IDがVGSとVDSの関数であろう、と考えて、
その変化分であるidを、全微分で、vgsとvdsの線形和として表現したものです。
VGS, VDSを変化させてIDが変化する動作の詳しい原理のところが分かりづらかった。
実はここは講義では時間の関係で少し省略しました。
実際には、まずVGSやVDSをある値に設定し、その前後で少しだけ
変化させます。
最初に設定した値を「動作点」と呼び、その前後での変化が
vgsやvdsであるわけです。
dIDがどのように使われているのでしょうか?
「信号」ですね。
つまりVGSやVDSの変化という、「意味のある電圧変化」に対応する
IDの変化、です。
「n型っぽい」という表現がイマイチよくわかりません。
もともとはP型だったところですから、VGSが正でも
あまり大きくない(VTより小さい)ときには、
P型領域にあるホールが抜けきらず、
また少数存在する電子も、集まりきりません。
そのため、ホールの数のほうが電子の数よりも多く、
完全なN型、とはなりません。
しかしもともとのP型よりはホールが少なく電子が多いわけですから、
「N型っぽい」という表現をしました。
半導体工学でも習ったので理解しやすかったです。
そうでしたね、あの科目でも習っていました。
MOSトランジスタがよく分かりませんでした。
なかなかとっつきにくいかもしれませんが、
まあそういうものです。
ホールとか電子がどうこう、よりも、特性だけ、定性的に
理解してもらえれば、と思います。
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