第5回分
トランスファーゲートはMOSを2つ使う分回路規模が大きくなってしまうのでは
TGでp、nトランジスタの二つを使う理由がわからない
「よりon,off」とはどういうことなのか
nMOSやpMOSはスイッチだ、と言いましたが、完全なスイッチ、では
ありません。
具体的には、MOSトランジスタにはしきい値Vtというのがあって、
nMOSでは、高い電圧をD側に加えても、S側に現れるのは、それより
Vt(例えば0.6V程度)分だけ下がってしまいます。
つまり「完全に」電圧を伝えることができないわけです。
同様にpMOSでは、低い電圧を加えても、それよりVt分だけ高い電圧に
なってしまいます。
そこでトランスファゲートでは、nMOSとpMOSを並列につないで、
低い電圧・高い電圧のどちらでも、「完全に」電圧を伝えられるように
しているわけです。
マンチェスタキャリー連鎖のような回路は論理式から素直に導かれるような物なのか
これはほとんど「ひらめき」ですね。
あるいは、頭がいい回路。
一段ごとに能動素子を入れていった結果、CLAなどに比べてどちらが高速なのか
MCCが高速である要因が知りたい
/Cnなどのノードをまずプリチャージし、その後、条件に応じて
放電する、という方式であるわけですが、まず充電は
pMOSトランジスタから直接行いますので、この充電にかかる時間は
かなり短くなります。
逆に放電するときは、Gnに対応するnMOSで放電するときは
nMOSトランジスタ2個分の経路で放電しますから、
これもかなり短くなります。
では一番時間がかかる放電経路はどこか、というと、Pnに対応する
nMOSトランジスタを通して放電する場合ですが、
ワーストケースは、最上位桁の/Cnノードの電荷が、
いずれの生成項Gnも0である場合に、PnのnMOSをどんどん通って
放電する場合、になるわけですが、この場合、放電経路になる
nMOSの数はケタ数と同じになります。
ただし論理ゲートでFAを作る場合と比べて、その遅延時間は
格段に短くなります。
TGを用いたFAやMCCなどFAのはせいを色々やったが、Snを早く求めたいときなど相互の関連から絶対的に最も高速であるという指標はあるのか
トランスファーゲートを用いれば、全加算器のTr数を最小に出来るのか
トランスファゲートを用いた全加算器の特徴がよくわからない
結局どの加算器が一番良いのか
TGを用いたFAというのは、いろいろな指標から、
かなり「よい」方式といえると思います。
MCCの回路はプリントにして欲しかった、動作が良く分からなかった
すいません、今後は気をつけます。
MCCでプリチャージをしないとどうなるのか
正しく動作しませんね。/Cnがすべて0、となる可能性が高そうです。
プリチャージってのは導線に電荷がたまるのか。また、その放電は必要なのか
そういうことです。
ただし電荷がたまるところは導線だけでなく、
MOSトランジスタのD(ドレイン)領域にもたまります。
またその放電は、必要に応じて行われるわけで、
放電がおこらなかったら、また次の動作サイクルのときに
プリチャージされますので、問題はありません。
キャリー優先全加算器でSnを後にするとCnがなぜ速くなるのか
キャリー優先加算器が良く分からなかった
キャリー優先加算器がキャリーを優先しているのは分かったが、計算段数が全加算器と同じにみえる。速度はSnも含めると遅くなると考えてよいのか
正しくはSnを後にしたからCnが早くなった、のではなく、
Cnをまずは求めるところまでは同じなのですが、
Snを求める式を、Cnを使わないで書くと、けっこう長い式になるのですが、
Cnを使って書くと、けっこう短い式になり、回路が簡単にできます、
という意味です。
セレクタを使った回路で能動素子を入れなければならないという話だったが、増幅器ではだめなのか
能動素子であるあのインバータは増幅器として働く、といえます。
ディジタルな回路で、一番簡単な増幅器はインバータ、という言い方もできます。
フィードバックや出力のない回路に入力を与えるひつようがあるのか
?すいません、質問の意図がよくわかりません・・・
今回紹介されたアーキテクチャは実際の世界ではどのくらい普及してる物なのか
世の中のコンピュータの中のプロセッサの加算器は、ほとんど
BCLAかCLAだと思いますよ。
マンチェスタ連鎖でφ=1、Pn=1、/Cn-1=1のときの動作が気になる
φ=1のときは、条件に応じて放電が起こる(「値の評価」といいます)ときですが、
Pn=1、/Cn-1=1のときは、/Cn-1と、プリチャージされた/Cnノードが
同じ電位ですから、電荷の移動がなく、電圧の変化はおこりません。
マンチェスタ連鎖のφがクロックだったら1クロックごとにCnが求まるのか
そういうことです。
マンチェスタキャリーの回路はφ=0のときA=0になるのか
いえ、φ=0のときは、上のpMOSがONになってプリチャージ、つまり
充電されますから、A=1となります。
マンチェスタとはなにか。またマンチェスタキャリー連鎖はどこに用いられるのか
マンチェスタキャリー連鎖の欠点はなにか
マンチェスタは地名のようですね。
MCCのように、組み合わせ論理回路的な回路なのにクロックφが必要な
回路(プリチャージして条件に応じて放電する、という動作をする回路)を
一般にダイナミック(dynamic)回路といいますが、
この回路は、一般にクロック信号が必要であるため、
制御がちょっとだけ面倒、という問題点はあります。
この授業に参考できる本を教えて欲しい
最初に紹介した「CMOS集積回路」(榎本・培風館)はいかがでしょう。
NOT素子は電流を流された時だけ出力すればいいのになぜ能動素子となっているのか
質問の意図がよくわかりませんが、
入力Aが変化したときだけ出力Xの値が変化する、という意味でしょうか。
NOT素子(インバータ)の動作を考えてみると、
出力Xは、常に電源VDDかGNDに、MOSトランジスタを通して接続されています。
(このような回路をCMOS回路と呼びます)
電源VDDあるいはGNDというのは、電圧源、つまり電流をいくらでも
流せるor吸い込めるもの、ですから、電圧源に対して
出力から電流を流しだすor吸い込むものが、能動素子、といえます。
クリティカルパスは段数の一番多い伝送経路だと思うのだが、それは最悪の場合の動作速度にだけ影響があると思うのだが、なぜ全体の動作速度に影響があるのか
最悪の場合の動作速度、ですが、回路全体が「動作が終わった」といえるのは、
そのクリティカルパスを信号が通り終えたときですから、
「全体の動作速度を決める信号経路」といえます。
RCAは普通にFAを作る時よりも回路が簡単になるだけで速度は上がらないのか。むしろ遅くなる気がするのだが
トランスファゲートを用いた全加算器のことでしょうか。
もしそうであれば、入力(an, bn, cn-1)から出力までの
論理ゲート段数を数えてみるとよいでしょう。
TGを用いるほうが、心持ち短いはずです。