第9回
●MOSトランジスタ
MOSトランジスタは他のトランジスタと比べてどのような点で優れた性能を持っているのか。MOS以外のトランジスタにはどんなものがあるか。MOSトランジスタはどのようなものに使うのか
ゲート(G)に電流が流れない、というのが最大の特長といえます。
また、物理的に小さく作ると特性がよくなる(スケーリング)、という
特長もあります。
これらの特長のため、最近は、トランジスタといえば、
MOSトランジスタのことを指すことも多くなりました。
メタルと半導体の間に絶縁体を入れるのはなぜか
ゲートGからチャネルに電流が流れないようにするため、です。
●MOSトランジスタの動作
チャネルがよくわらなかった
もう一度復習を・・・
"しきい"値とは敷居値でいいのか。VTは実際にはどの程度の値なのか
閾値、と書きます。
MOSトランジスタの製造方法によるのですが、
最近だと0.4V程度のようです。
P型半導体にもともと多く正孔があるのに、どうしてゲートに正電圧を印加するとP型半導体に電子が湧いてゲートの正電荷に引っ張られるのか
「VGSが正で大きい」とき、多くの電子が集まるとあるがP型半導体の領域には電子は少ないのにどこから多くの電子がくるのか
P型半導体には、もともと少しだけ電子が存在していて、
それが集まってくる、ということです。
「VGSが負または正だが小さい」とき、N型半導体領域での電子がゲート影響を与えないのか
それはないですね。
「VGS = 0」のときはなないのか。その場合にはIDはどうなるのか
VGS=0は、VGSが正だけど小さい、ときと似た状態になります。
「VGSが正だが小さい」とき、ソースドレイン間はP型領域であると考えていいのか
そういうことになります。
●MOSトランジスタの静特性
VDSは負になることはないのか
もともとMOSトランジスタは、基本的に左右対称ですので、
負にしたときは、DとSを入れ替えて考えます。
なぜVDS < VGS-VT のときIDはVDSに伴って増加するのかわからない
チャネルの深さ(縦方向)が増えて、IDが流れる場所が大きくなるので、
流れやすくなる、ということです。
なぜピンチオフ点が現れている状態で電流が流れるのか。ピンチオフ点がドレイン側に現れるのはなぜか。ピンチオフ点よりドレイン側で反転が起こらないのがなぜかよくわからなかった。ピンチオフ点が現れている状態だとIDは一定で流れると言っていたが、ダイオードが2個入っているモデルとは動作が違うのではないか。ピンチオフ点が現れたときでもNPNの形になっているのに電流が一定に流れるのがよくわからない。ピンチオフ点とドレイン側のN型半導体の間に正孔があるなら流れる電流はとても小さくなってしまうのではないか
ソースから流れてきた電子は、ピンチオフ点までくると、
行き場がないように見えますが、ピンチオフ点から先は
大きな電界がかかっていますから(VDSの大半がここにかかる)、
ピンチオフ点を飛び出せば、この電界に引っ張られて
一気にドレインに入ります。
すなわちピンチオフ点から先の領域の大きさは、
IDにはほとんど依存はしません。
ピンチオフ点での実質的な電圧がVGS-VDSとなるのがよくわからない
電圧のかかり方を整理してもらうと分かりやすいかと思います。
反転しているチャネルが深くなるという話がよくわからなかった
より電子が集まってくるので、N型に反転する領域が大きくなる、
という意味です。
●MOSトランジスタの小信号等価回路
VGSとIDが比例するのがよくわからない
前述のように、VGSを増やすほどチャネルが大きくなりますので、
IDが増えます。
VGS, VDS の微小変化に対するIDの変化分を考えたときの変形のやり方がよくわからなかった。∂ID/∂VDS をrdの逆数と置くのは等価回路上の特性からか。∂ID/∂VDS =1/rdと置くのが釈然としない
rdのおき方は、歴史的慣習、です。
gmとrdは定数なのか
動作点(どの付近でvgsなどを微小変化させるか)に依存しますが、
MOSトランジスタごとに、動作点によって決まる定数となります。
id=gm*vgs+(1/rd)*vdsの式からどうやってMOSトランジスタの等価回路を作るのか。なぜそのような等価回路になるのか
あの等価回路のidやvgs、vdsの関係が、たしかにその式になる、
という理解でよいかと思います。
●その他
半導体の講義でnp積一定、つまり n,p>0 と学んだ。そうであれば、MOSトランジスタのP型半導体領域は必ずしもP型半導体でなくともよく、VTがずれるだけで同様の特性が期待できると思うのだが、これは正しいか
まったくその通りです。
今回はMOSアナログ回路を考えたが、他のMOS回路はあるのか
MOSトランジスタは、実は論理回路を作るときにも
有用なものです。
記号ばかりでよくわかりづらかった。例などで具体的な数字の入ったものを挙げて頂けるとわかりやすくてうれしい
たしかにそうなんですよね。善処します。