(ディジタル)オシロスコープ測定入門

(2007/12/24 akita(at)merl.jp)

概要

ここでは、ディジタルオシロスコープ(Digital Storage Oscilloscope; DSO)を 使って、いろいろな電圧波形を観測するための、 基本的な手順を知識をまとめてあります。

研究室にあるDSO (Tektronix TDS2024等)には、多数のボタン・ツマミが ありますが、主に使うのは上図の赤丸で囲った部分です。 以下で、これらを使って順に波形を観測してみましょう。

波形の観測とトリガ

オシロスコープは、基本的には、周期的な電圧波形を、 「ある条件」を「トリガ」として、画面上に静止させて表示する計測器です。 この「ある条件」とは、通常は、 「電圧が、設定したしきい値を上昇して(rising)あるいは 下降して(falling)横切る」タイミング、として定義します。

例えば上図では、1kHz・約4Vp-pの正弦波を観測している 状態です。 画面内の波形表示エリアの上の端に下向きの黒色の矢印が、 また右端に左向きの黄色の矢印があります。 この矢印の交点である、画面上の赤丸内の点が、「トリガ」が かかる位置、になります。 このトリガの垂直位置は、「TRIG MENU」ボタンの左側の LEVELツマミで変更できます。 またトリガの水平位置は、パネル右端のHORIZONTALグループ内の POSITIONツマミで変更できます。

なおこの画面は、パネル上の「TRIG MENU」ボタンを押して トリガ条件を指定するメニューを表示させた状態です。 この中の「Slope」(傾き)で、この中でトリガ位置を、 波形の立ち上がり(rising)とするか、立下り(falling)とするかを 指定できます。 この例では、トリガ条件をrisingに設定してあることがわかり、 確かに波形の立ち上がりをとらえていることがわかります。

なおこのトリガ条件指定メニュー内の他の項目をまとめておきます。

波形メニュー

各波形の色のボタン(「CH1 MENU」など)を押すと、 各波形の設定メニューが現れます。 ここでよく使うのは、「Coupling」メニューで、 これはプローブで拾った信号を、直接表示(DC)か、 コンデンサをはさんで直流分をカットし、交流分(変化分)だけを 表示する(AC)か、あるいはチェック用にGNDに固定する(GND)かを 指定します。

上図は0V〜5V・1kHzの方形波をCoupling=DCで観測したものです。

上図は同様に0V〜5V・1kHzの方形波をCoupling=ACで 観測したものです。この方形波の直流分がカットされ、 -2.5V〜+2.5Vの範囲で表示されていることがわかります。

このCoupling=ACは、大きな直流オフセットをもつ 小振幅の交流信号波形(例えば10Vを中心に±100mV、つまり 9.9V〜10.1V)を観測するときに使います。

波形の電圧レンジは、MENUボタンの下の大きめのツマミで 変更できます。 例えば上図の例では、画面の左下のほうに「CH1 2.00V」と 表示されていますが、これは画面上の縦方向の点線の間隔(DIVと呼ぶ)が 2.00Vであることを示していますが、このツマミで、この数値を 変更できます。

また波形の0Vの位置は、画面内の波形表示エリアの左端に、 波形の色の三角マーク・チャンネル番号とともに示されていますが、 これはMENUボタンの上の小さめのツマミで変更できます。

なお「CH1 MENU」ボタンなどをもう1回押すと、 そのチャンネルの波形自体が表示・非表示を切り替えられます。 観測していない波形は非表示にしておくとよいでしょう。

単発波形の観測

オシロスコープは、基本的に、波形の表示が常時更新されていて、 トリガがかかっているときにはその位置を固定し、 トリガがかかっていないときはそのままの波形を表示します。 そのため、周期的な電圧波形の場合は波形が止まって見えますが、 単発的におこる現象をとらえるのは、本来は原理的に不可能です。

ところがディジタルストレージオシロ(DSO)では、観測波形を 常時メモリに蓄えているため、単発現象を観測することが可能です。 その方法は、次の2つがあります。

Normalモード

トリガ条件指定メニュー内の「Mode」を「Normal」にすると、 トリガがかかるときだけ画面が更新され、 次にトリガがかかるまで画面が更新されません。 そのため、単発的におこる現象を、画面上で止めて観測することができます。

Single Sequence

トリガが1回かかったら、観測自体を止めてしまうのが Single Sequenceモードです。

まずパネル上の右上のほうにある 「SIGNLE SEQ」ボタンを押します。

すると画面の上のほうに「Ready」と表示され、波形表示が静止します。 この状態が、トリガがかかるのを待っている状態です。

この状態でトリガがかかると、画面の上のほうの表示が 「Acq Complete」となり、設定したトリガ条件の前後の波形が 表示され、再び波形表示が静止します。 この状態では、再びトリガがかかっても、画面は更新されません。 そのため、測定開始後の本当に1回だけの現象を観測することができます。

なお再度観測したいときは、パネル右上のほうの「RUN/STOP」ボタンを 押すと、再度Ready状態になります。

カーソルと計測

ディジタルストレージオシロスコープでは、画面上に電圧や時間などを 計測するためのカーソルを表示させることができます。 パネルの上のほうの「CURSOR」ボタンを押すと、 カーソル設定メニューが現れます。

Typeを「Amplitude」にすると、2本の水平線が現れ、 それぞれの電圧、および両者の電圧の差が表示されます。 この例では、上の水平カーソル1が2.16V、下の水平カーソル2が -2.16Vの位置にあり、その両者の差が4.32Vであることが わかりますが、このカーソルを正弦波の上下のピークにあわせて ありますので、この4.32Vが正弦波のピーク-ピークの電圧であることに なります。

なお両者のカーソルの位置の移動は、機種によって少々異なり、 TDS2012/2014ではCH1/CH2の垂直位置設定ツマミ、 TDS2024ではカーソル設定メニューで移動するカーソルを 選んだ後、パネル左上端のツマミでカーソルを移動します。

Typeを「Time」にすると、2本の垂直線が現れ、 時間方向の計測ができます。 この場合は、2本の時間差(Δt)に加えてその逆数(1/Δt)も 表示されるので、周期波形の周波数を計測するのに便利です。

Know-hows / Tips

おや?と思ったときは・・・

プローブの倍率

プローブ本体の腹の部分には、下図のように倍率を設定する スイッチがあります。 この設定と、波形メニューの「Probe」の数値が一致していないと 波形の電圧が10倍や1/10倍のように見えますので、 両者が一致していることを確認しましょう。

プローブの根元

プローブの根元のところは、プローブ本体と ケーブルの接続部分になっていて、ネジ留めで固定されています。 ときどきゆるんでいると、観測しているはずの波形が現れない、 などの現象がみられますので、おかしいな、と思ったときは 疑ってみましょう。 ちなみに、プローブのGND端子のミノ虫クリップがついてるケーブルも ときどき断線しかかっていることがあるようです。 (このときは、50/60Hzが観測波形に乗ります)

プローブの校正



プローブの交流特性を調整するトリマのツマミが、 プローブの根元にあります。(上図の赤丸内) 正確な波形観測が必要な場合は、特に、測定に先立って 校正を行いましょう。 CH1のプローブ接続端子のすぐ左にある金色の端子には、 1kHz・5Vp-pの方形波が現れていますので、 プローブをそこにつなぎ、下の図の校正OKの状態の波形になるように トリマを小型プラスドライバーで調整します。

↑校正OKの状態

↑校正NGの状態