すべての電子機器は、電源がないと動きません。
今回と次回で、主に交流から直流をつくりだすための電源回路について見ていくことにしましょう。
コンセントにきている電圧は、50Hzまたは60Hz、実効値100Vの交流ですが、ほとんどの電子回路では、電源に直流の電圧が必要になります。
電池は直流電圧を供給することができますが、電池の「もち」を気にしないといけないので、交流から直流を作り出す回路について考えてみましょう。
その第一歩は、交流を「直流っぽく」する、つまり整流をする必要があります。
整流をするための最も簡単な回路は、このような回路で、半波整流回路と呼びます。
これは、交流電圧は、半分が正、半分が負であることに注目して、半分の正のときだけ、負荷側に電流が流れるようにダイオードを1個使うものです。
ダイオードは、加わる電圧が正のとき(順方向)には電流が流れ、負のとき(逆方向)には電流が流れませんから、この図のような電圧が負荷側に出てくるでしょう。
交流が半分だけ切られて「直流っぽく」なっています。
半波整流回路は、交流の半分だけを負荷に伝える回路でした。
これでは、残りの半分は捨てている(負荷に伝わっていない)ことになってもったいないので、
ちょっと工夫をして、この図のような回路をつくってみましょう。
※この回路図で、ダイオードの向きが一部間違っています。
図中の下側の2つのダイオードの向きが逆で、
すべてのダイオードが、左から右に向かって電流が流れる向き、に
接続されます。
この回路を、全波整流回路と呼びます。
この全波整流回路は、ダイオードをうまく使って、交流電圧が正のときも負のときも、負荷に電流が流れるようになり、
結果として、元の正弦波の下半分を上半分に折り返したような波形が得られます。
以上のような整流回路で、交流が、変化はするけど正の電圧が変換できました。
ただしこれでは、電圧が一定となる直流ではないので、この変化を「ならす」必要があります。
これには、この図のようにコンデンサをつければよく、正の電圧がかかっているときにはコンデンサが充電され、
その電圧が下がってくると、ある程度はコンデンサにたまった電荷で負荷の電圧を保ってくれるため、このような電圧の波形(脈流)になります。
このような回路を平滑回路と呼びます。
この平滑回路によって、かなり「直流っぽく」なりましたが、それでも多少、電圧が変動しています。
もちろんランプをつけたりモータをまわす、というような用途であれば、これぐらいの電圧の変動は気にならず、「直流」とみなして構わないわけです。
実際、いわゆる「ACアダプタ」は、これだけの回路のものも多くあります。
(ただし電圧を100Vから下げるための「トランス」が最初に入る)
厳密に一定の電圧が必要な場合は、電圧を本当に直流にする回路、を追加する必要があります。
つまり電圧を「安定化」させる回路であるわけですが、これにはいくつかの方法があります。
その1つが、「シリーズレギュレータ」と呼ばれるものです。
このシリーズレギュレータの考え方は簡単で、この図のように、変化する電圧(脈流)に対して、
抵抗を通した後の電圧が一定になるように、電圧の変化分にあわせた電圧が抵抗にかかるように抵抗の値を制御する、というものです。
この制御のために、「一定にしたい電圧」と「現在の電圧」を比べ、
その差に応じた抵抗の値を設定すればよいわけですが、この制御される抵抗は、ふつうはトランジスタを使います。
というのも、トランジスタのC-E間の電圧は、Bに流す電流で変えることができますから、等価的に値を変えられる抵抗とみなすことができるわけです。
出力電圧 Voを、R1, R2 で分圧した電圧 Vo ・ R2 / (R1 + R2) が基準電圧 Vr と同じになるように、このトランジスタを電圧比較器によって制御をするわけです。
このような電圧安定化回路は、非常によく使われるので、 専用のICが市販されています。