第3回: オペアンプ(その2)
負帰還の理論
一般に、「出力の一部を、入力に戻す」回路を帰還回路と
呼びますが、特に「出力の一部を、マイナスにして入力に戻す」
回路を負帰還回路と呼びます。
負帰還回路はこの図のようにモデル化できます。
図中のそれぞれのパラメータは次のとおりです。
- Vin : 入力信号の電圧
- Vout : 出力信号の電圧
- Vi : 増幅器の入力電圧
- A : 増幅器の増幅率(つまりVout = A・Vi) (もちろんA>>1)
- H : 減衰部の利得 (0< H <1)
つまり出力をH倍に減衰させて、入力Vinから引いているわけです。
したがって次のような関係が成り立ちます。
この2つの式からViを消去すると、VoとVinの比、
つまり全体伝達特性Gは次のようになります。
ところが一般的には、Aは非常に大きいため、
AH>>1と近似することができます。
したがって伝達特性Gは、次のようになります。
つまり全体の伝達特性(つまり増幅率)は、
「Aが何倍か」には関係なく、
「1/H倍」になるわけです。
一般にHは抵抗での分圧で作ることが多く、
その値は非常に正確になります。
したがって全体の伝達特性も、非常に正確にできるわけです。
オペアンプは「Aが十分大きい(理想的には無限大)」増幅器で、
かつ2つの入力のうち片方がマイナスになっていますので、
オペアンプを使った回路は、まさに「負帰還」を使った回路であるわけです。
負帰還回路と増幅器の周波数特性
※講義では触れていません
一般に増幅器の増幅率Aは、ある周波数fcより
高い周波数では、周波数に比例して増幅率が
低下していきます。
つまり増幅率Aは、次のような式で書けることになります。
(1次のRC回路と同じですね)
これを、前回の負帰還増幅回路の伝達特性Gの式に代入すると、
次のようになります。
ただしG0 = A0 / (1 + A・H)です。
この式から、この負帰還増幅回路の増幅率が下がり始める
周波数は、(1 + A0・H)fc、つまり(1 + A0・H)倍と
増えます。
ただし直流(f=0)での増幅率は A0 / (1+A0・H) 倍と
A0よりも小さくなりますので、
結果として
「直流で増幅率を下げた分、高い周波数まで増幅できる回路」
ができることになります。
受動フィルタ(復習)
今回は、ある一定の周波数の信号のみを通す「フィルタ(filter)」回路を
オペアンプをつかってつくることを考えていきましょう。
まずは前期の情報回路第1の復習から入りましょう。
RC 1次フィルタ
この図のようにRとCからなる回路の、入力viと出力voの比、
すなわち伝達関数H(ω)を求めてみます。
といってもコンデンサのインピーダンスが入力の周波数(or角周波数ω)によって
変わりますから、このH(ω)もωによって変わる、すなわちωの関数となります。
回路方程式(というほどのものでもないが・・・)を解いてみると、
次の式が導かれるでしょう。
ただし
分母にωの1次式が入っているため、「1次の(ローパス)フィルタ」と呼ばれます。
オペアンプを使った1次フィルタ
前回は、いきなり複雑なフィルタを紹介してしまいましたので、
今回はちょっと戻って、オペアンプを使った1次のフィルタみましょう。
このような回路の伝達関数を、反転増幅器のときと同じように求めると
次のようになります。
つまり、1次のLPF、ということになります。
ただし全体の増幅率がR2/R1ですから、RCだけからなる受動フィルタと違い、
増幅もいっしょにできる、という特性があります。
ちなみにこれのボード線図は次のようになるでしょう。
オペアンプを使ったフィルタ(その1: VCVS型)
オペアンプを使って、フィルタ回路をつくることを考えましょう。
やや天下り的ではありますが、この図のような回路を考えてみます。
この回路の、伝達関数H(ω)=vo/viを求めたいわけですが、
地道にやっていくことにしましょう。
※講義中には別の導き方を紹介しました。
この図のような等価回路を描いてみます。
(2つの入力の電圧が同じで電流が流れない、などで、等価的に同じことを
考えています)
次のような式が導かれるでしょうか。
※[訂正]第1式の第3項の分母のC2は、正しくはC1です
最初の式に、最後の式を i2 = jωC2・vo と変形してから
代入すると、
となりますので、これを2番目の式に代入すると、
最終的に次のような式が導かれます。
かなり見にくい式ですので、
とおいてみると、
次のように書くことができます。
これは、LC2次LPFの伝達関数(次回資料参照)そのものですから、
このオペアンプの回路も、2次のLPFであることがわかります。
オペアンプを使ったこの形のフィルタを、
VCVS型 (voltage Controlled voltage Source型)と呼びます。
両方とも同じ伝達関数ならオペアンプをわざわざ使う必要はない、という
気もしますが、
周波数が低いところで使うフィルタを作ろうとすると、
特性のよいインダクタ(直列抵抗が小さいもの)を作るのが困難であるため、
一般に、周波数が高いところで使うフィルタを作るときにはLC回路で、
周波数が低いところで使うフィルタを作るとき、またはフィルタ自身に
増幅性能を持たせたい(この回路ではできませんが、オペアンプを
使っていますから、増幅性能を持たせることは可能です)ときには、
オペアンプを使ったフィルタ(能動フィルタ)を使うことが
多いようです。
この回のソボクな疑問集
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