第6回: オペアンプ(その3)の演習
スルーレート
たとえば正弦波の入力 Vi = V0 sinωt を反転増幅回路などで増幅する場合、
Vi' = ωV0 sinωt ですから、最も急な入力の変化はωV0となります。
したがって出力もこれにあわせて変化するはずなので、
増幅率R1/R2の反転増幅器では、最も急な出力の変化は(R2/R1)ωV0となります。
これが、スルーレートよりも大きくなってしまうと、
出力はその変化に追いつかず、傾きがこのスルーレートの三角波に
なってしまうわけです。
[演習]
NJM741のスルーレートSRは、データシートから0.5V/μsですが、
このNJM741を使った増幅率10倍の反転増幅器に、
ω=10kHzの正弦波を加えるとき、
出力が正しい波形となる振幅の最大値V0はいくらでしょうか。
(解: 出力電圧の変化の最大値は 10×104V0 = 105V0で、
これがスルーレート0.5V/μs = 0.5×106V/s以下であれば
よいので、V0 = 5V)
GB積
一般に、データシートに載っている増幅率は、直流の場合です。
一般にオペアンプの増幅率は、次の図のように、ある周波数から
下がり始め(周波数10倍に対して増幅率1/10=「-20dB/decade」
(decadeは「10倍」の意味)、
または周波数2倍に対して増幅率1/2=「-6dB/octave」
(octaveは「2倍」の意味))ます。
この-20dB/dec=-6dB/octで増幅率が下がっていくところでは、
増幅率は周波数に反比例していますから、
増幅率と周波数の積は一定となります。
この積をGB積 (Gain Band-width積)と呼び、
オペアンプの利得をあらわす指標の一つとなります。
(ちなみにこのNJM741のデータシートにはGB積の値は載っていませんが、
3ページ目の右下のグラフから、100kHzでの増幅率が20dBほどですから、
GB積は100,000×10=106程度、とういことになります)
増幅率の影響
反転増幅回路を例に、増幅率が無限でないと、どれぐらいの
影響があるのか、を考えてみましょう。
[演習]
反転増幅回路で、オペアンプの増幅率が有限(A)の場合、
出力と入力の関係式を導いてみてください。
解(※訂正: この式の全体に-(マイナス)がつき、分母のR1のあとが+が正しいです)
この結果から、R2/R1がAと比べて無視できなくなると、
全体の増幅率が理想オペアンプから大きくずれてくる、
すなわちAを∞とみなせなくなることがわかります。
非反転増幅回路でも同様に求めてみましょう。
非反転増幅回路のオフセットの影響
[演習]
非反転増幅回路で、オペアンプに入力オフセット電圧Voffがある場合に、
Vi=0としたときの出力Voを求めてみてください。
(※訂正: 回路図のオペアンプの入力+と-が逆です)
解
いろいろなオペアンプのデータシート
くつかのオペアンプの主な項目をまとめてみました。
|
NJM741 |
NJM062 |
NJM2068 |
NJM2130 |
NJMOP07 |
特徴 |
汎用 |
JFET入力 |
低雑音 |
低消費電力 |
高精度 |
入力オフセット電圧[mV] |
2 |
3 |
0.3 |
1 |
0.06 |
入力オフセット電流[A] |
5n |
1p |
5n |
1n |
0.8n |
入力バイアス電流[A] |
30n |
2p |
150n |
15n |
1.8n |
電圧利得[dB] |
110 |
80 |
110 |
88 |
112 |
入力抵抗[Ω] |
2M |
1012 |
300k |
- |
33M |
消費電流[mA] |
1.7 |
0.2 |
5 |
0.08 |
2.7 |
次のような傾向・特徴があるでしょうか。
- 入力オフセット電圧:
「高精度」オペアンプが特によい
- 入力オフセット電流・バイアス電流・入力抵抗:
「JFET入力」オペアンプが特によい
- 消費電流:
「低消費電力」オペアンプが特によい
- 電圧利得:
あまり差がない
この回のソボクな疑問集
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