第12回: オペアンプ(その3)の補足
※以下は期末試験の範囲外とします
現実のオペアンプの回路
第5回・第6回で見ていた、現実のオペアンプの理想オペアンプからの
特性のズレは、主にオペアンプの中身の回路構成に依存します。
ここでは、現実のオペアンプが、どのような電子回路で
作られているのか、を少しだけ見ておくことにしましょう。
差動増幅回路
オペアンプの本質は、「2つの入力の差」を増幅する、というものです。
この特性は、次のような差動増幅回路でつくることができます。
トランジスタの小信号等価回路によれば、
ベース電圧の変化分vbeと、コレクタ電流の変化分icの間には
ic = gm・vbeという関係があり、
gmを相互コンダクタンスと呼びます。
これを用いると、V1, V2の変化分v1, v2に対して、
2つのトランジスタのコレクタ電流をそれぞれic1, ic2とすると、
ic1 = gm・v1, ic2 = gm・v2 が成り立ちます。
これから、ic1 - ic2 = gm・(v1 - v2)となりますので、
2つのトランジスタのコレクタ電流の差(ic1-ic2)は、
2つの入力電圧の差(v1-v2)をgm倍に増幅したもの、となります。
つまりこの差動増幅回路は、2つの入力電圧の差を増幅する回路、
つまりオペアンプそのもの、といえます。
(ちなみにReがほぼ電流源として働くとすれば、
ic1 + ic2はほぼ一定となります。)
カレントミラー
もう一つ、オペアンプを構成する上で欠かせないのが
次の図の左のようなカレントミラー(current mirror)と呼ばれる回路です。
この回路で、左側のトランジスタQ1、右側のトランジスタQ2の、
エミッタ電流、コレクタ電流、ベース電流を、
それぞれIE1, IC1, IB1, IE2, IC2, IB2とすると、
次の関係が成り立ちます。
- IE1 = IC1 + IB1
- I1 = IC1 + IB1 + IB2 = IE1 + IB2
- IE1 = IE2 (Q1とQ2のVBEが等しいため)
- I2 = IE2 - IB2 = IE1 - IB2
これから、I1 - I2 = 2IB2となりますが、
ベース電流IB2は、ほぼ無視できますから、IB2=0と近似すれば、
I1=I1となることが導かれます。
つまりこの回路は、左側に流れる電流と同じだけ、
右側に流してくれる、つまり電流を鏡で映したように
コピーをするような回路、であるわけです。
さてこれをどう使うかというと、
この図の右のようにしてみると、次のような関係が成り立ちます
この2つの式からI2'を消去すると、
となります。
つまり2つの電流の差を求めることができたわけです。
実際のオペアンプの回路
以前みていたオペアンプICの
LM358のデータシートに載っている
回路図(p.20)を見てみると、
たしかに差動増幅回路とカレントミラーが入っていることがわかります。
この回路図の右半分には、この両者の組み合わせで得られた、
「2つの入力の差に比例する電流」を増幅して、出力Voをつくる
増幅回路があります。
この回のソボクな疑問集
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