第6回: オペアンプ(その3)の演習

いろいろなオペアンプのデータシート

前回の課題で例として紹介したいくつかのオペアンプの 主な項目をまとめてみましょう。
NJM741 NJM062 NJM2068 NJM2130 NJMOP07
汎用 JFET入力 低雑音 低消費電力 高精度
入力オフセット電圧[mV] 2 3 0.3 1 0.06
入力オフセット電流[A] 5n 1p 5n 1n 0.8n
入力バイアス電流[A] 30n 2p 150n 15n 1.8n
電圧利得[dB] 110 80 110 88 112
入力抵抗[Ω] 2M 1012 300k - 33M
消費電流[mA] 1.7 0.2 5 0.08 2.7
次のような傾向・特徴があるでしょうか。

増幅率の影響

反転増幅回路を例に、増幅率が無限でないと、どれぐらいの 影響があるのか、を考えてみましょう。

[演習]
反転増幅回路で、オペアンプの増幅率が有限(A)の場合、 出力と入力の関係式を導いてみてください。
(解: Vo = 1/{1 - (1/A)(1 + R2/R1)}・(R2/R1)Vi)

非反転増幅回路のオフセットの影響


[演習]
非反転増幅回路で、オペアンプに入力オフセット電圧Voffがある場合に、 Vi=0としたときの出力Voを求めてみてください。
(解: Vo = -(1 + R1/R2)Voff)

入力バイアス電流・入力オフセット電流


[演習]
入力バイアス電流Ib (Ib1, Ib2)があるような現実のオペアンプを使った 反転増幅回路(図のRb=0としたもの)に対して、 Vi=0のときの出力Voを求めてみましょう。 また、Rbを含めたVoの式を求め、これからこのVoの誤差が最小となる Rbの値を求めてみてください。 (ヒント: I2=I1-Ib1, V-=-RbIb2, I1=-V-/R1)
(解: Vo = -(1+R2/R1)RbIb2 + R2Ib1, Rb=R1R2/(R1+R2)とすると Vo = R2(Ib1 - Ib2) = R2・Ioff となるが、一般に入力オフセット電流は 入力バイアス電流よりも非常に小さいので、Voが小さくなる)

スルーレート

現実のオペアンプの電気特性の表にのっている項目で、 講義で触れられなかったもののうち、スルーレート(slew rate)について 紹介しておきましょう。 これは、出力の変化の速さを表す量で、通常[V/μs]を単位として あらわします。 たとえば正弦波の入力 Vi = V0 sinωt を反転増幅回路などで増幅する場合、 Vi' = ωV0 sinωt ですから、最も急な入力の変化はωV0となります。 したがって出力もこれにあわせて変化するはずなので、 増幅率R1/R2の反転増幅器では、最も急な出力の変化は(R2/R1)ωV0となります。 これが、スルーレートよりも大きくなってしまうと、 出力はその変化に追いつかず、傾きがこのスルーレートの三角波に なってしまうわけです。

[演習] NJM741のスルーレートSRは、データシートから0.5V/μsですが、 このNJM741を使った増幅率10倍の反転増幅器に、 ω=10kHzの正弦波を加えるとき、 出力が正しい波形となる振幅の最大値V0はいくらでしょうか。
(解: 出力電圧の変化の最大値は 10×104V0 = 105V0で、 これがスルーレート0.5V/μs = 0.5×106V/s以下であれば よいので、V0 = 5V)


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