第7回: 発振回路
正帰還回路と発振条件
一般に、出力の一部を入力に戻す回路を帰還回路と呼び、
その例として、第1回のときに負帰還回路の紹介をしました。
この帰還回路をうまく作ると、入力を与えなくても
出力が出てくるような回路をつくることができます。
この図のように、A倍の増幅器の出力Voutを、さらにH倍して
増幅器に戻すような回路を考えてみましょう。
このとき、VoutがH倍された後で増幅器でA倍され、再びVoutになるわけ
ですから、この一回り(ループ)で、VoutはAH倍されることになります。
このAHをループ利得と呼びます。
このループ利得が、次のような条件を満たすと仮定をしてみましょう。
- ループ利得AHが実数。つまりVoutをAH倍しても、位相のズレがない。
- その実数のループ利得AHが、ちょうど1倍
この2つの条件は、次のように書くことができます。
- Im(AH) = 0 (周波数条件)
- Re(AH) = 1 (電力条件)
一般にHは周波数ωによって変わりますから、
逆に言うと、このような回路では、この2つの条件をみたすような
周波数の信号に対しては、この周波数のVout、つまり周波数ωの正弦波が
常に出続けることになります。
ちなみにこれ以外の周波数では一般に Re(AH)<1 となりますが、
これはVoutが、ループを一回りすると小さくなってしまうわけですから、
次第に0に集束してしまい、この周波数の信号は現れなくなってしまう
ことになります。
したがって、この2つの条件を満たすような周波数ωの信号(正弦波)のみが
Voutとして現れることになります。
このような回路を発振回路と呼びます。
ウイーンブリッジ発振回路
この図のような、オペアンプを使った回路を考えてみましょう。
この回路をウイーンブリッジ発振回路(Wien Bridge Oscillator)と
呼びますが、その名のとおり、実は発振回路になっています。
よく見ると、まず赤枠の中は、非反転増幅回路そのものです。
その増幅率Aは、A = 1 + R4/R3 となります。
残りの部分は、次の図のように、出力電圧Voutから、
抵抗とコンデンサの回路を通して、オペアンプの+端子側の電圧V+、
つまり非反転増幅回路の入力電圧を決めているわけです。
その関係は次のようになるでしょう。
- V+ = {R1/(1+jωC1R1)}/{R2+1/jωC2+R1/(1+jωC1R1)} Vout
ここで、R1=R2=R, C1=C2=Cとおくと、次のようになります。
- V+ = jCR/{1-(ωCR)2 + jω・3CR} Vout
= {jCR(1-(ωCR)2) + 3(ωCR)2} / {(1-(ωCR)2)2 + (ω3CR)2}
よって、この非反転増幅回路とC1, C2, R1, R2からなるループの
利得AHは、次のようになるでしょう。
- AH = {jωCR(1-(ωCR)2) + 3(ωCR)2} / {(1-(ωCR)2)2 + (3ωCR)2}・(R3+R4)/R3
すると、まず周波数条件は次のようになります。
- 周波数条件: Im(AH) = 0 → ωCR = 1
このときの電力条件は次のようになるでしょう。
- 電力条件: Re(AH) = (3 / 9)・(R3+R4)/R3 = 1
→ (R3+R4)/R3 = 3、つまりR4/R3 = 2
以上から、このウイーンブリッジ発振回路(ただしR1=R2=R, C1=C2=C)が
発振するための条件と、そのときの発振周波数は次のようになることになります。
- 発振条件: R4/R3 = 2
- 発振周波数: ω = 1/CR
この回のソボクな疑問集
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