深圳のEMS企業JENESISでインターンさせていただいてきました

先日深圳を訪れた際、お願いをして、EMS(組み立て受託)会社のJENESIS社で、1日だけですがインターンをさせていただきました。

JENESIS社は、比較的小ロットの電子機器の設計から量産(組み立て)までを日本クオリティで行う会社で、日本人の藤岡淳一さんが経営されています。最近は話題の翻訳端末「ポケトーク」の量産もされています。藤岡さんご自身とJENESIS社の話は「「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム」(インプレスR&D)に詳しいのでぜひご参照ください。

お世話になったのは、タクシー向けの決済タブレット端末の組み立てラインです。中身はAndroidタブレットに、各種電子マネーやクレジットカードの決済や携帯回線を通した広告などの表示機能をもつ端末です。

今回お世話になった組み立てラインで組み立てているタブレット端末

基本的には組み立ては流れ作業で行われ、組み立ての工程は細かく分割されて個人に割り当てられ、部分的に半自動化されている工程もあります。私が担当したのは、端末の裏のクリップ部分の組み立てでした。当然ながら工場の方は全員中国人で、英語ができる方はほとんどいないのですが、最初にリーダー(?)の方から作業の指示を受ける際には、実物で手順を説明してもらえるので、だいたい理解できます。個人的に少しだけ中国語の勉強(といってもNHKラジオ中国語程度)をしているのですが、ピンの「長いほう」と説明を受けるときに「长个 (zhang ge)」と言われたのが聞き取れた(たぶん)のはちょっとうれしかったです。

まずはクリップ本体に、向きに注意しながらバネをはめる。

最初の1時間くらいで、クリップにバネをはめていきます。

クリップをとめるピンを刺して、折り曲げて固定する。

続いてこのクリップをタブレット本体に固定するピンを曲げる作業をしていきます。説明を受けて理解はしつつも、最初はなかなかスムーズにできないのですが、数個分終わるまでにはコツをつかんで、スムーズにできるようになりました。こういう作業ごとのコツは、個人の裁量の範囲でできますし、マニュアル化しにくいと思われるので、作業がスムーズに進むように個人で工夫することは大事ですし、それができることも大事だと思いました。今回は他の人の作業の様子をじっくり見るほどの余裕はなかったのですが、このようなマニュアルに載っていない工夫は、みなさんがされているんだと思います。またJENESIS社の量産の性格上、組み立てる製品を切り替えることが多いので、製品ごとに組み立て工程を一人分に分けて、その中で個人の工夫で効率をあげていく方法はよい方法だと思いました。また前の工程から部材を渡される時間に多少ばらつきがあって、ときどき、部材がなくて作業したくてもできない待ち時間が出てしまうことはやむを得ないのだと思います。それでも今回の作業では、待ち時間はかなり少なかった気がします。ちなみに前の工程で少し部材がたまっているときに、前の方の作業を少し手伝おうとしたことがあったのですが、「それは私の作業」と断られました。自分の作業、という誇りに加えて、下手に他人がやると、責任の所在があいまいになるということもあるのかもしれません。

ときどきリーダー(?)の方が後ろで見ていて、問題がないかチェックしていて、不十分なところがあれば指摘されます。

作業は、2時間半ぐらいごとに休憩や昼食休み(1時間)と夕食休みをはさんで、ずっとこの作業を続けます。前の工程の人も、休憩時間が近づいてくると疲れてくるのか、部品をはめない状態で部材を渡されたりしますが、休憩が終わってからは、自分でも気分一新で効率が上がる気がします。やはり気合だけで乗り切らずに、適度な休憩は大事ですね。

全体を通して、みなさんとても集中して作業をされていて、労働に関する意識の高さを強く感じました。お世話になった日は、目標数が高かったのか、22時までの操業だったのですが、夕食後も作業のペースは落ちることはありませんでした。

ちなみに休憩の時間になると音楽が流れるのですが、みなさん切り替えがとても早く、一斉に外へ出て行って、お茶を飲んだりトイレに行ったりスマホを見たりしていました。また風習なのか昼食は素早く終えて仮眠をいる方も多くいました。休憩をうまくとることは、作業の効率にとても大事ですね。

あともう1つ気づいたのは、不良品に対する対処でした。組み立て後に電源を入れて起動し、初期設定をする、という工程を担当するときがあったのですが、ときどき(1%くらい?)、起動しない端末があります。そのときは、その端末をファームウエア書き込み工程にまわして、再度ファームウエアを書き込んでから動作チェックをします。今回は1台だけ、それでも治らない端末があったのですが、いろいろな人が出てきて、直流電源をつないだりテスターで計測したりしながら、その端末はリペア(修復)工程にまわっていったようでした。単に不良品としてはじいて捨ててしまうのではなく、なんとしてでも有効活用する姿勢が、当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、とても勉強になりました。

今回のインターンで量産の現場を、少しでしたが体験させていただいて、現場の皆さんが高いクオリティで製品を組み立てている、つまり形のあるものへと仕上げていく過程を間近でみることができました。デジタルデータだけの世界ではない、形のあるハードウェアに特有の現象を意識しつつ、またそれを安心して任せつつ、ともにハードウェアという形にしていく過程に、今後も向き合っていきたいと思います。

(写真提供:菊地仁さん)

細かい作業は老眼にはなかなかしんどかったです・・・(笑)

(秋田)

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